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上村 直樹氏
東京理科大学薬学部 教授
最近の保険薬局ではジェネリック医薬品の普及により、医薬品の備蓄品目数が非常に多くなっている。その結果、調剤台上棚に収まることができず、調剤台の引き出しに個装ケースごと収納している。その場合、医薬品の取り揃え業務は引き出しを開けて、個装ケース側面からの情報で識別することになる。本研究では薬剤師の取り間違え事故を防止する観点から、引き出しからの医薬品取り揃え業務において、薬剤師が医薬品個装ケース全体のイメージと個装ケース側面のデザインとの関連性を検証した。また被検者に眼球運動記録装置アイトラッカーを装着し、引き出しでの取り揃え業務においての視線を調査することにより、個装ケース側面における識別に重要な要素としてデザインが必要であることがわかった。本講演ではこの研究の結果から今後の医薬品包装に重要と思われる課題について提示する。
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定本 清美氏
横浜薬科大学臨床薬学科 教授
医薬品の種類の多様化と伴に、使用方法も多様化している。医療用医薬品においては、注射剤やインフルエンザ治療薬、点鼻薬、吸入薬などのデバイスを使用した治療においても、患者自らがそれらを使用して安全かつ有効な治療を施行する必要がある。また、一般用医薬品においても、小児から高齢者までが対象となるアレルギー治療用点鼻薬などの様々な年代に広く使用される医薬品の存在は今後も増加する可能性がある。一方、在宅医療においては、残薬の問題がクローズアップされ、治療の有効性が正しく判断できない、医薬品が無駄になってしまうなどの経済的側面も含み、社会的な問題へと発展している。小児から高齢者までに安全で有効な医薬品の使用については、個人への教育、医薬品包装の工夫、支援体制の整備など多面的なアプローチが必要であると考えられる。
西村 英尚氏
羽島市民病院薬剤部・主幹
糖尿病患者は全世界で4億2500万人(2017年)、日本では1000万人、予備軍1000万人と推定されています。現在、日本で使用可能な糖尿病治療薬は内服薬7種類、注射薬2種類あり、生活習慣病の治療薬としては一番種類が多く、その中でもインスリンは1921年に発見されてから今日に至るまで、糖尿病のすべての病態において確実に血糖値を下げることができる唯一の薬であります。しかし、インスリンはアミノ酸からできているため内服薬としては効果がなく、これまで注射薬として開発されています。今回は、インスリン注射器と針の歴史と使い方のポインについて講演する予定です。
三林 洋介氏
首都大学東京都立産業技術高専教授
人間工学は人間と他要素間のインターフェイスにアプローチし、適正化、最適化を工学的に検討する科学的学際領域である。本講演では医薬品包装のインターフェイスの一つである商品表示と動作の二つの観点から検討した事例を紹介し得られた特性を探求する。一つ目は表示のインターフェイスについて開封時の包装シート自体に印字されている表示がユーザーの開封動作に与える影響性について、また、ピクトグラムを用いたパッケージや添付文書表示の読解性について視覚情報処理計測実験から検討した研究事例を取り上げる。また、PTPシートから医薬品を取り出す際の開封動作における力学実験を取り上げて、包装開封におけるシニアフレンドリー(SF)とチャイルドレジスタンス(CR)について検討する。
下枝 貞彦氏
東京薬科大学薬学部臨床薬剤学教室 教授
がん薬物治療に用いられる抗がん剤や分子標的薬の種類やレジメンは近年急速に増加し、臨床現場におけるリスクマネジメントはより複雑化している。ハイリスク薬であるこれら抗悪性腫瘍薬の適正使用において、包装形態が果たす役割は大きい。しかも、内服の抗悪性腫瘍薬では特殊な投与方法が求められることもあり、在宅治療を行うがん患者が陥るメディケーションエラーのリスクは高まるばかりである。また、内服薬では、自宅に持ち帰った薬剤を安全に管理し、確実に患者が服用するためには、チャイルドレジスタンスとシニアフレンドリーの両面を兼ね備えた包装形態が強く求められる。そこで、本講ではがん領域に的を絞り、抗悪性腫瘍薬に求められる特有の医薬品包装形態について論じ、チャイルドレジスタンスとシニアフレンドリーという相反する概念をどのように両立させるのかを考えたい。
髙山 明氏
京都薬科大学臨床薬学教育研究センター 特命教授
ピクトグラムは誰にでも理解できる情報ツールとして非常口やバス乗り場等の案内表示に利用されている絵文字である。日本では1964年に開催された東京オリンピックにおいて競技会場への案内に広く用いられた。医療現場においても診療科やトイレなどの案内や、患者のベッド角度を表示するなど看護分野にも応用されている。医薬品に関するピクトグラムには、一般社団法人「くすりの適正使用協会」が開発した、くすりの使い方、くすりを使う時間の目安、使用時の注意事項、相互作用等の例はあるが、薬効を示したピクトグラム(以下 薬効ピクトグラム)はない。そこで今回、薬効ピクトグラムを7種類作成し、薬効ピクトグラムの必要性について検討した。その結果、薬効ピクトグラムは、医薬品の誤薬服用を防止し、患者のアドヒアランスの向上に期待できる。日本語を理解できない外国人にも応用できる。災害時における医薬品仕分け作業において、一般ボランティアの協力が得られる。高齢者の在宅医療に貢献できると考えられ、薬効ピクトグラムのニーズは高いと考えられる。現在、医薬品の包装表示は法的規制に従った情報を提供しているが、今後は患者自身に病気に対する理解を深め、アドヒアランスの向上に向けたメッセージ性のある表示も望まれていると考える。
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